えー、新人時代でも無かった初めての事態に真っ白な頭で言葉を探しつつ、同時にメインテーブルのお二人を確認していました。
だったら何でもいい!「あー」でも「う~」でも言えばいいものを、なんでお二人の姿を確認していたんでしょう。
我ながらもうこの辺の無意識の行動は理解不能です。
お二人はメインテーブルで、まだ笑顔でありながらも「大丈夫ですかー?」という視線を送っていらっしゃいます。
ダーーーッ!本当に申し訳ない!あぁ… 書きながら思い出しました。
お似合いのそのお二人の、何かポジティブな雰囲気を感じたくて、姿を確認してそれを頼りにその場をリカバリーしようとしていたんだと思います。
ようやく繋ぐべき言葉を拾い出し(それでも変ですけどね、おかしな間ができたのは紛れもない事実です)、開宴の辞を終え、その先の進行へ。
新郎新婦のプロフィール紹介はこのところの通例で司会者からでしたが、ありがたいことにいただいていた原稿が「おいしく」デフォルメされていて、それで結構笑いが起きました。
この失敗エピソードをご紹介している手前エラそうなことは言えないんですけれども、このプロフィール紹介、「笑われてなんぼ」だと思うんですね。
あっさり経歴だけ紹介するなんて勿体ないし意味がない。
乾杯後に行うなんて通常、もっての外だと思いますよ。
いや、エラそうなことはやはり今は言えない。

そうこうするうち、お待たせしました部長、出番です!
あ~あ、こいつの前で、やっちゃったよ___そんな自責の念も無かったというとウソになりますが、引きずると尚悪いですから忘れるよう努めます。
コザックからはごく普通に新郎直属の上司としての紹介にとどめました。
マイクの前に立った彼は、“縁”をテーマにスピーチを始めました。
人前で話すことにさすが慣れてるわー___と思わせる口ぶりです。
思えばこの日のお二人、傍からみてもご縁があったんですね。
新郎のお父様と新婦のお兄様が、同じ会社の、しかも同じフロアで勤務していて、しかもしかも新郎自身とは別の総合商社、つまりライバル会社にご勤務という… 同級生の彼は何食わぬ顔をしてしっかりその辺りをリサーチしていたんですね、大したものです。
で、彼自身のエピソードに触れ始めました。
「かく申す私にも得難い不思議な“ご縁”がございまして今、この場にこうして立っております。そちらにいらっしゃいます司会者の河合さんと私とは、実は名古屋のとある高校の同級生の間柄でして、本日何十年ぶりかで再会を果たしたのです」
彼の言葉が終わらないうちにコザックに向けられるゲストの方々の温かい視線が、まさしく秒を追うごとに高まっていくのをはっきりと感じました。
それは、彼が社内で信頼を集めている人物であることの証左でした。
その同級生だからこの司会者OKだと、そういう空気に支配されました。
彼に「助けなきゃ!」との意図があったかどうかは不明です。
しかし、彼は、そのスピーチの中であっという間にコザックの窮地を救ったのです。
日頃紹介する側の司会者MCコザックを、見事な伏線を張った上で最大級に「おいしく」紹介したのです!

<2017年記事 再録>