(最終更新日:2021/5/10)
結婚式、その後の披露宴に向けて、お二人が準備していくことって沢山ありますよね?
衣装。
花嫁たるものまずはここからですか?
会場装花。
花材、色合い… お花はテーマやイメージに大きな影響を与える重要アイテムです。
招待客。
祝福してくれそうな皆さんの笑顔が浮かんできますねー。
ところで司会者は?
「式場が手配してくれるんじゃないの?」。
「プロに頼めば誰だって間違いないでしょ?」。
「いや、高校の友達に頼むって、もう卒業式の時に誓い合ったんだけど… なにか?」。
いずれもYESでありOKですが、その程度の位置付けでよろしいですか?

司会者はお二人側、つまり主催者側に立ちゲストとの間をスムーズに繋ぐ、進行を担当するキーパーソンです。
その司会者という〝アイテム〟に対してどこまで重きを置くか、こだわるか、探すのに時間を掛けられるか___それによってお二人の動きは変わってきます。
そしてこれは有限の“アイテム”。
所定の日時に司会者は、ただ1組の「晴れの日」の為に資する身体しか持ち合わせてはいません。
日程が近付くにつれて一人また一人と司会者のスケジュールは塞がっていきます。
カメラマンなどと同様、この辺りが他の多くのアイテムと異なるところですね、早めに決定しておくに越したことはありません。
お二人の司会に対する思い入れ度に応じて、そしてどこでどのように司会者を手配するのかによって、個別に分かり易く説明していきたいと思います。

私はこちらのウェブサイトを公開し(https://cozzack.com/)、依頼のあった様々な会場(ホテル・結婚式場等)に出向いています。
また同時に一司会者として、複数の司会事務所に登録・所属していて、特定の会場に頻繁に伺います。
更には事務所代表として司会事務所を運営、各司会者を取引先に派遣してもいます。
そんな異なる3つの立場からの提言であると、ご理解いただければ幸いに存じます。

これまでの実体験に基づき、通常ではあまり知られることのない、ひょっとするとブライダル業界の「不都合な真実」に類することまで(!?)、余すことなく開示してまいります。
繰り返しますが司会者という〝アイテム〟に対するお二人の比重、そして依頼するパターンによって解説していきますので、必要に応じて適宜ご活用ください。

ご一読の後には本記事が、きっとお二人にとって“オンリーワン”の司会者を、あるいは後悔しない“それなり”の司会者を見つける手引となっている筈です!

1.全ての司会者の中の僅か5%! “スペシャルな”司会者の存在

長らく司会業に携わってきた中で目にしたモノ、それは他と一線を画する“スペシャルな”司会者の存在です。
魅力的な声の持ち主であることは勿論、経験豊富でありながらその枠内に留(とど)まらずこだわらず自由な発想の持ち主。
ホスピタリティマインド旺盛で調整能力に長け、どんな会場に赴いても笑顔で周りを引き立て、豊富な語彙を駆使して冷静に進行。
新郎新婦の要望に応えていきながら、時に起こるアクシデントなどむしろ場を笑いに巻き込む為の材料にしてしまう、優れたアドリブ能力。
しかし出過ぎず、お二人には最高の思い出を、ゲストには最大限の満足を、想像を遥かに超えたカタチで「結果として」お届けしているプロ中のプロ。

どんな世界でもそうでしょうが、司会の世界にもそんなプロフェッショナルが存在します。
そうですねー、全司会者の中の5%前後でしょうか。
20~30人規模の司会事務所があるとして、その中に1~2人いるかいないか…
とても稀有な存在です。
その司会者に出会える可能性、5%前後の存在というのでは、きっととても難しいでしょう。
しかも、事前になかなか確認することもできません。
お開きの後「あぁ、そうだった…」と「結果的に」感じるというだけのことなのです。

但し、そういう司会者に巡り会えなかったとしても問題はありません。
プロ司会者は“プロ”なのです。
決して素人ではありません。
ここでは「そういう司会者も存在する」ということにだけ触れておきます。

2.こんな司会者が身近にいれば答えは簡単!

過去に出席した友人や同僚、親戚の結婚式・披露宴で、「いいなー」と思った司会者はいませんでしたか?
もしあなたがこの問い掛けに対し「あッ、いたッ!」と“激しく同意”される程の司会者と出会っていたのならもう答えは簡単です。
その司会者さんにお願いしましょう!それがあなた方お二人にとって、きっとベストの司会者です。

あなたはその時、結婚式あるいは披露宴の流れや雰囲気、それに及ぼす司会者の対応に心地良さを感じた筈です。
この世に司会者はゴマンといますが、そういった実際の場面を体感できる機会はそう滅多に訪れるものではありません。

私はしばしばホテルや結婚式場のブライダルフェアで接客に当たることがあるんですが、そんな折、司会のブースで話もそこそこに司会者一覧のパンフレットやPR映像を一から十までひたすらご覧になり、その中から最も気に入った司会者を選ぼうとなさるカップルが結構いらっしゃいます。
その結果は、見過ぎてしまって混乱し「結局誰がいいのか分からなかった」といった事態に陥りがちなんです。
それはそうです。
各司会者がそこで語っていることって大同小異、曰く「晴れの日を和やかに~」、「少人数披露宴から大規模パーティーまで~」、「厳粛なものからアットホームなものまで~」… 
そういったPRを例外なく笑顔で語ります。
しかし大切なことは、“生の”その場で実際にどう対応してくれるのか___ということなんです。
率直なところ、そういった通り一遍のコメント映像から読み取ることはできません。

「いいなー」と感じたその時の司会者さんは、あなたにフィットすることが実証された唯一の司会者です。
しかも既に“ご縁”があって偶然に一度出会っている訳で、なにがしかの“好意”をお感じになっているのではないでしょうか?これって結構大切なことだと思いますよ。
迷うことはありません。
早速その先輩カップルに、その司会者さんの連絡先を尋ねましょう。
きっとかつての新郎新婦であれば、司会者と電話番号やメールアドレスの交換くらいはしている筈です。
司会者の側も、スケジュールが空いていて、その時のその会場の専属司会者でもない限り喜んでOKしてくれるでしょう。
因みにこの専属司会者(何かの理由でその会場以外では業務を行わない司会者)って、実は殆ど存在しないものなんです。

同様に…
お二人の友人・知人に司会の仕事をしている方がいらっしゃってそれが波長の合う方であれば、それもきっとベストの司会者です。
是非お願いしましょう!
知り合いだという安心感、気安さ。
実際の場面では、お二人がもし望めば、きっと内にグイグイ入ってきてくれるような進行をしてくれ、アットホーム感溢れるパーティーを演出してくれるでしょう。
言うまでもなく、その方はお二人との距離が一番近いプロの司会者です。
思わぬ共通のエピソードなどをさり気なく、アドリブで披露してくれるかも知れません。

反面、友人・知人であればこその気を付けたいポイントもあります。
慶事が行われるのは一般的に土日休日ですよね?
あなた方もそういった日をお選びならば、お二人が依頼しなくてもその方にはきっと別の依頼があった筈です。
プロ司会者として活動している訳ですから、そこはやはり友人・知人であるということを離れてきっちりその対価は支払いましょう。
必ずや最高の思い出の日を共に創り上げていってくれる筈です。

ここに挙げた、その司会振りが気に入った司会者及び信頼できそうな友人・知人である司会者は、先に述べました「僅か5%の“スペシャルな”司会者」ではないかも知れません。
しかし、「ナンバーワン」を探す必要はないんです。
お二人には司会者選びの他にも、決めていかなければいけないことが山ほどある筈です。
それらに速やかに情熱を移行させましょう。
本記事も、この章までお読みいただければ充分です。
その方は、お二人にとってきっと「オンリーワン」となり得る司会者だと思いますよ。

3.司会者の手配の仕方とそれぞれの違い

上記“2.”の司会者に心当たりのない方が、恐らく大多数であろうと思います。
以下、司会者の手配の仕方とそれぞれの違いについて解説してまいります。
今回私はこの記事を書くに当たって、同じように「結婚式の司会者の選び方」について書かれたインターネット上の記事にいくつか目を通してみました。
こと「手配の仕方の区別・パターン」についてお伝えすることは私も同じです。

○会場(ホテル・結婚式場等)提携のプロ司会者
○フリーのプロ司会者
○友人の司会者

この3つのパターンに分類されるかと思います。
しかしながら、それぞれの内容や、メリット&デメリットと紹介されていることにはいくつも異論があります。

3-1.会場(ホテル・結婚式場等)提携のプロ司会者

このカテゴリーの司会者に依頼するのが一番一般的です。
概ね各サイトで紹介されている事柄をまずは記載します。
全てが私の見解では決してありません。
●概要
司会料金はおよそ5万円~。「一流」と目されるホテル等では10万円以上。
会場は提携する司会事務所と最低1~2社契約していて、「一流」と目されるホテル等では3社以上(一部には会場内部で司会者を養成する場合も有り)。
●メリット
自ら探す手間が不要なこと、打ち合わせに至るスムーズさといった観点から、最も時間的な負担が少ない。
その会場での司会経験が豊富で、プランナーや会場スタッフとの業務になれており連携が取りやすい。
披露宴の流れ・会場の動線も熟知していて、トラブル対応という面でも安心。

●デメリット
司会料金が通常最も高額。
動画などの参考資料が少ない。用意していない会場も有り。
動画・プロフィール等で気に入った司会者がいても、選定の段階で既にスケジュールが塞がっているケースも多い。
会場によっては選べる司会者が少ない、または選べない。
事前に会うことも話すこともできず、対面での打ち合わせは1回のみ。

3-2.フリーのプロ司会者

こちらも各サイトで紹介されている事柄をまず記載します。
こちらも全てが私の見解ではありません。
●概要
司会料金はおよそ3万円~10万円未満。
特定の会場と提携せず、依頼者の要請により司会者を会場へ派遣する事務所所属の司会者及び個人の司会者。所謂「外注」の司会者。
概ねインターネットを通じて営業活動を行っている。
他には、依頼者の知己であるプロ司会者。
●メリット
会場を通さない為比較的安価に手配が可能。
自分たちの好みや判断で選べ選択対象者も多い。交通費などを度外視すれば選択の幅は全国。
動画・画像に加え“先輩カップルの声”など参考資料が豊富なケースも多くイメージしやすい。
成約前に直接会ったり電話で話したりが可能なケースも。
対面での打ち合わせが複数回のケースも有り。
●デメリット
自ら探す手間が必要で、会場パンフレットから選ぶのと違い各事業者・個人のウェブサイトには整合性が無い為、「読み解く」感受性が必要。
またそれらウェブサイトには、基本的に「いいこと」しか書かれていない。
施行する会場に慣れていないケースが多く、初めてである可能性も。
会場によっては所謂「持ち込み料」が発生する。3万円前後。
司会料に加えて「持ち込み料」+「司会者の交通費」を支払ったらむしろ高額となるケースも有り。

3-3.友人の司会者

上記二例と同様、紹介されている事柄の記載です。
こちらも必ずしも私の見解ではありません。
●概要
司会料金というのではなく、お礼として2~3万円程度包むのが礼儀。
ゆっくり食事する時間もなく、ご祝儀は辞退が無難。
親族や親しい友人だけを招いた少人数の催しに適する。
●メリット
恐らく一番安価に収まる。
新郎新婦をよく知っている友人であれば、温かく和やかな雰囲気になりやすい。
プロ司会者の進行では得られない“珠玉の時間・思い出”を共有できる可能性が有る。
●デメリット
友人一人に対しての精神的負担が大き過ぎる。
司会スキルにあまり期待はできずミスが起こりがち。アクシデントへの対応にも疑問符。
進行表や司会台本作成など任せきりにできず、新郎新婦の負担も増大。
あまりの不手際があった場合、その後の付き合いに禍根を残す可能性も。

3-4.パターン別(×3)司会者の実際

上記それぞれの概要やメリット&デメリットを記した文章中の太字が、私には異論のある部分です。
個別にみていきましょう。

①「提携司会者は会場での経験が豊富で連携が取りやすい」は誤解

予備知識をお持ちでない新郎新婦に一から説明をしようとしてこういう記述になるのかも知れませんが、なんとも「ステレオタイプ」な説明で、これを書いているのがもしプロの司会者なのであれば、率直な物言いで失礼ですが凡庸な司会者だと思わざるを得ませんね。
殆どの記事に(全ての___と言ってもいいくらいです)、この「提携司会者は会場での経験が豊富で連携が取りやすい」と書かれています。
実際は…
「最も会場側から信頼されている『一部の』司会者についてはそうです。しかし会場側が提供する全ての司会者がそうなのではなく、むしろ有能なフリーの司会者はその会場での経験の有無を超えて素晴らしく、会場側と連携することに何ら問題ない」、が過不足のない答えです。

そもそも「連携」ってどういう意味でしょうか?

※【連携】・・・同じ目的で何事かをしようとするものが、連絡を取り合ってそれを行うこと。

とあります。
これ、プロ同士であれば至極当たり前のことなのではないでしょうか?
つまり、これは概ね、フリーのプロ司会者に依頼することを考えている新郎新婦に対してそれを阻止し、提携している司会者を薦めようとするプランナーさん始め会場関係者の「方便」なのです。
この辺りの実例として私のウェブサイト、お客様からいただいたレビューの一つを紹介させていただきます(N様ご夫妻)。
手前味噌で恐縮ですが、まさに実態に即した内容です。
よろしければ文中の後半部分をご覧ください。
“PD”とありますのは「ブライダルプロデューサー」か「ウェディングプロデューサー」、要はプランナーさんと同義です。

このケースでは、早い段階でお二人から依頼がありました。
恐らく、会場との打ち合わせを何回か重ねた後で初めて司会者は外部から持ち込む旨PDさんに伝えたところ、“連携の良さ”を理由に提携司会者を猛烈に薦められた___という成り行きだったと思うのです。
初めてのことで色々不安や心配を抱えているお二人が、担当プランナーからそう言われたらそりゃ迷いますよね?
そういった営利的雑音(?)をシャットアウトする意味でも、もしフリーのプロ司会者に依頼する積りであるなら、早い段階でそう会場側に伝えておいた方がよろしいと思います。
できれば会場との契約前に伝えられるといいですね。
また、衣装などと違って司会というアイテムは、所謂「持ち込み料」を請求する会場としない会場が半ばしています。
苦手な方もいらっしゃるでしょうが、交渉次第である程度までは会場側の譲歩を引き出すこともできる筈ですので、まぁ極端な言い方をすれば「司会の持ち込み料が掛からないのであれば(あるいは持ち込み不可と言われたら『司会の持ち込みがOKなら』)契約したいけれど…」と伝えるのも、交渉のテクニックだと私は思うのですが。

②「提携司会者は披露宴の流れや会場の動線を熟知、トラブル対応も安心」は誤解

①で示したことと重複してしまうのですが、まず「披露宴の流れを熟知」ということ、ひとことでナンセンスです。
ある程度の経験を有したプロ司会者であれば、施行会場での経験の有無にかかわらず様々なバリエーションに対応できる筈ですし、その会場オリジナルのちょっと他とは違う進行なり演出なりがあるならば、それはお二人からか、ご存じなければ担当プランナーから説明を受ければいいだけの話です。
外部の司会者には知らせないとでも言うのでしょうか?大切なお客様の進行を司る司会者に対して。
これも提携司会者を推す会場側の方便だとご理解ください。

次に「会場の動線を熟知」ということ、これもナンセンスです。
上記と同様、その会場特有の動線があるならばそれを司会者に伝えてください___それだけです。
これを持ち出してくる方が想定しているのは恐らく、ハウスウェディング会場や船舶など、挙式から披露宴または披露宴中にゲストが場所を移動する進行が可能な会場である場合の動線、ひいては誘導の仕方という意味合いだと思うのですが、よほど方向オンチな司会者でもない限りは一度確認すれば事足りますし、ある程度色々な会場での司会経験を積んでいる司会者であれば同様の移動案内は経験している筈で、それに基づいて動線の想定はできます。
提携司会者の優位性を語るには理由がとても浅薄ですね。

トラブル対応もしかり。
司会者には重要なスキルの一つであって、これは会場を選ばず必要なものです。

③「フリー司会者は施行会場での経験が無いか慣れていないケースが多い」は誤解

正確には…
「フリー司会者は施行会場での経験が無いか慣れていないケースもあるが、大きな問題ではない。重要視すべきは司会者としての本来のスキル、そして自分たちとの相性」が申し上げたいところです。
これも上記①②とほぼ重複する理由からの、私の異論です。

ここでは、私の経験したある披露宴での出来事を挙げてみましょうか。
拙ウェブサイトの「Q&A」にも引用していることなのですが(【よくあるご質問 Q&A】~「Q.司会者の外注に、何かデメリットは無いんですか?」)…   

誰もが知る首都圏の有名結婚式場でのこと。
この時はフリー司会者の立場で伺い、事前にお二人からできるだけ歓談の時間を取って欲しい___と要望いただいていました。
その為にも余興などに要する時間は絞り込み、序盤スムーズに乾杯、祝宴、そして歓談。
グループごとにメインテーブルにゲストがお運びになって盛り上がり、お二人が意図した展開でした。
するとやにわにキャプテンが現れ、「新婦、中座しましょう」。
歓談多めがご希望だとお二人の意向を伝えますと気色ばみ、「あとで事務所通して話しましょう」と言い放ち急かすのです。
これ、どういう意味かというと…
その結婚式場が提携する司会事務所からやって来た司会者だと私のことを勘違いしたキャプテンが、「指示に対して口答えをした」と式場のプランナーに後刻報告、プランナーから司会事務所にクレーム、司会事務所から司会者に注意___こんな図式のことを彼は宣(のたま)ったのです。
「私は外部の司会者ですが(なにか?)」。
と返すと一瞬言葉を失い彼はどこかへ消えてしまい、数分後打って変わって慇懃な笑顔と共に戻って来て言いました。
「歓談の時間、取れて15分ぐらいですかね~」。
結果、ご満足いくような流れで中座になりました。
キャプテンはきっと、この披露宴の後にも宴席が入っていて時間的に“巻き”たかったんでしょう。
しかし順調に進んでいる中で明らかにお客様のリクエストに反する指示でしたので異を唱えた訳ですが、これが会場と提携する司会者であった場合は言いにくいのです、利害関係が存在しますから。

こういうことをお客様たる新郎新婦が知る機会は、あまり無いかと推察します。
因みにこの会場での当時の私の司会経験は、ゼロではありませんでしたがほんの数回だったと思います。
提携司会者とフリー司会者の優劣ですとか、ひいては施行会場での経験の有無について、あまりこれまで見聞きした情報を鵜呑みになさらない方が賢明だと、挙げたような事例が物語っていると思うのです。

④「友人司会は親族や友人のみの少人数の催しに適している」は誤解

そうお考えになることは理解できます。
大人数になればなるほど緊張もするでしょうし時間も押しがち。
不測の事態の出現率も、招待客が多い程必然的に高まるでしょう。
一方で、プロの司会者が2人いた場合そのスキルの差がハッキリ如実に表れるのは、例えば100名の宴席よりも20名の宴席の方なんです。
つまり少人数パーティーでこそ、空気が沈滞している時に場を和ませたり、きめ細やかにお一人お一人に気配りしたりといった、臨機応変な司会者の対応力が必要となるからです。
列席者の殆どが司会をするその友人のことをよくご存知で、それこそ愛情あるヤジなど飛ばしてくれる雰囲気が存在する場合はいいのですが、そういうアドバンテージなく少人数の催しをお友達に任せるのは、少々お気の毒に感じます。
繰り返しますが少人数パーティーを盛り上げることはプロの司会者にとっても、なかなかに難しいのです。

3-5.この第3章のまとめ

忌憚なく「パターン別司会者の実際」について記してきました。
④を除けば全て、会場提携のプロ司会者に対してフリーのプロ司会者を擁護するような内容にお受け取りになられたかも知れません。
がそれは本意ではなく、既成の概念があまりにもステレオタイプに過ぎるからです。
会場提携のプロ司会者にせよフリーのプロ司会者にせよ、いいモノはいい悪いモノは悪い。
それを実態に則して正しくお伝えしませんと本記事を書いている意味がなく、つまり利用される新郎新婦さんが〝半分程度のチャンスをみすみす逃している〟と痛切に感じるからです。
本記事の冒頭に自己紹介しましたように、私はフリーの立場で、また提携司会者の立場で司会業務に携わり、更には司会事務所代表として会場提携の司会者を派遣しているという3つの立ち位置を有しています。
特定の司会手配パターンを擁護することはないのです。

「ここで結婚式を挙げよう!」と目をキラキラと輝かせたお二人の前に、最初に笑顔で現れて接客するのはプランナーさんです。
会場によって「プロデューサー」だったり単に「婚礼担当」だったり呼称は異なりますが、彼らの多くはお二人に “寄り添う”イメージ的効果を考慮してか同世代の若者(多くが女性)であることが多いと思います。
そしてこれは勿論ビジネスには違いなく、彼らには新規獲得の為の、また単価アップの為のノルマが課せられていることが多いのです。
翻ってみてみると彼らの多くは未だ社会経験が浅く、でありながらかなりの裁量権を持っていて、これは後発の新進気鋭の会場にありがちなケースですが、割と接客が強引で会場側の「縛り」を厳然と突き付けてくることがあります(勿論一部であって、それが全てのそれらの会場に常態化している訳ではありません)。
その結果「パターン別司会者の実際」の①で挙げた実例のように、「連携」というワードを武器に提携司会者を薦める巻き返し工作を図ったりもするのです。

別の事例も挙げましょうか。
プランナーには裁量権があるとお伝えしました。
同一会場であっても担当プランナーによっては、例えば司会者の持ち込み(外部手配)程度は認める者と認めない者が混在していることを私は知っています。
プランナーの考えによって、あるいは新郎新婦の“有り様”によって、サジ加減をしているのでしょうね。

また、司会事務所を運営していることから、私は他事務所から司会者の紹介を依頼されることがあります。
繁忙日であるなどの理由で、その事務所が契約する会場でのお客様が希望するような司会者を手配できず、それで依頼があるのですがそうした場合、会場側はその司会者が会場での業務が初めてであっても勿論そのことをお客様には伝えず、提携のプロ司会者として任に当たらせるのです。
こういったケースは1~2社の司会事務所との契約で婚礼を施行している、やはり後発の会場にあるケースで(後発だからこそ新しく、特に女性に人気のある会場だったりします)、3社以上と契約しているような会場ではまずないでしょう。
提携司会者がみな当該会場での経験が豊富である訳ではない、という事例です。

ここで私が一番お伝えしたいことは、「本質を見極めましょう」ということです。
会場提携のプロ司会者とフリーのプロ司会者、そのカテゴリー自体に優劣は特段ない。
それぞれに玉石混合であって“記号”にとらわれてはいけないこと。
また、友人の司会者はプロに比べるとスキルの面では恐らく劣り心配な面もあるけれど、プロからは得られない未来永劫共に語り続けていけるような“珠玉の時間・思い出”を生み出してくれるかも知れない___それらのことです。

4.司会者は男性?女性?どんなタイプがいい?

司会者のちょっとした歴史的なこと、男性・女性司会の需要と供給の現状などについて、拙ウェブサイトの「Q&A」に比較的詳しく掲載しておりますので参考にしてみてください(【よくあるご質問 Q&A】~「Q.ブライダルの司会者って、女性の方が一般的なんじゃないですか?」)。  
 

これについてもやはりステレオタイプに語られることが多いですね。
曰く、「厳粛な雰囲気なら男性司会者、華やかな雰囲気にしたいなら女性司会者」ですとか、「ベテランに安心して任せるのか、フレッシュな人と共に創り上げていきたいのか… お二人のイメージに合わせて司会者も選びましょう」というような。
しかし、新郎新婦のご希望に合わせて如何様にも組み立てて進行していくことができるのが、また突発的な事態にもフレキシブルに対応していくことができるのがプロの司会者ではないでしょうか?

前章と、お伝えしたいことは基本的には同じですので初めに結論を申し上げてしまいます。
男性司会者でも女性司会者でも、いいモノはいい悪いモノは悪い。
ベテランか若手かについても同じ(但し、あまりにも“くたびれた”印象であったり、経験値が浅く周りが見えていないタイプだったりは別ですが)。
落ち着いた雰囲気or明るさ満載の雰囲気、いかなるパーティーイメージであっても選ぶべき前提は同じ。
司会者の性別も、年齢も、見た目の雰囲気も、選ぶ絶対的な基準にはならない。
水準以上の司会者は、それらを超えて盛り上げてくれるのです!

こう申し上げると「身も蓋もない」でしょうか?
でしたらここは、著名人を例に挙げるとご理解いただけるでしょうか。
ポジティブに取り上げる分にはお名前を挙げてもよろしいですよね?
ただ完全な私の好み・主観にはなってしまうのですが。

「会社の上司が大勢来るしあまりキラキラな印象は…。落ち着いた雰囲気の男性司会がいい」というお二人に、女優の天海祐希さんはいかがでしょうか?
女性ですけど、希望を叶えてくれてお釣りがたんまり返ってきそうですよね。
むしろ上司が変に喜んでしまいそうです。

「友人中心だし余興を盛り上げて欲しいしドレスの紹介なんかもして欲しいから、華やかな雰囲気の若い女性司会がいいわ」なんておっしゃる新婦さんに、キャスター&ラジオパーソナリティーのジョン・カビラさんはいかがでしょうか?
男性で恐らく還暦をも過ぎたご年齢だと推察しますが声はいいし、とても細やかな語り口、かと思うとテンションアゲアゲの喋りにも定評があり、老若男女問わずウケはきっと抜群です。

「笑顔いっぱいの披露宴がいい。彼女のことは褒めて欲しいけど、僕のことはユーモアたっぷりにイジッて欲しいから… 男性かな?」なんて言う新郎には、明石家さんまさんは別格としても、上田晋也さんや加藤浩次さんなど主に男性のお笑いタレントの顔が浮かんできます。
が、女性ですけど同じくお笑いタレントの友近さんはどうですか?
キレイだしきっと盛り上げ上手だし、「もうやめて~!」っていうくらい楽しくイジってくれるんじゃないでしょうか?

まあ、この方々が結婚式の司会をしてくれるとは思いませんがあくまで良きイメージとして。
名はなくとも確かな力量のあるプロの司会者ならば、性別・年齢・雰囲気… それらの先入観を超えてきっと想像以上の、素晴らしい一日を彩ってくれると思うのです。
司会者の候補が多過ぎて!___という場合に性別や年齢など、ある程度絞れば決めやすいといった側面はあります。
ただやはり“記号”にとらわれるということは、半分程度のチャンスをみすみす逃している___そう思います。
さあ、ステレオタイプな観念は捨てて、融通無碍(ゆうづうむげ)に選びましょう。
実際のお二人の結婚式・披露宴も、類型化されているよりはフレキシブルな方がよっぽどいいでしょ?

5.まとめ ~ で結局… 結婚式 司会者選びの正解は!?

そうですね!
で結局、選び方の正解は何なのか?
以下にまとめましょう。

◯第2章で挙げた司会振りが気に入ったり、あるいは信頼できそうな知己であるプロ司会者がいるなら、それはきっとベストの司会者です。
但し前者の場合、当事者意識(自分達が新郎新婦だったら、との意識)でその場にいないと感受性が働きませんので留意してください。
こういった司会者に心当たりがあるなら、あれこれ見比べたりネット検索する手間も省けます。
その人こそがお二人との相性の良さが確実な、「オンリーワン」となり得る司会者です。
因みにこの場合、カテゴリーとしては「フリーのプロ司会者」ということになります。

◯会場提携のプロ司会者から選ぶなら、そもそもご自身で選べますか?選べませんか?
選べるならプランナーさんに、その司会者の特徴や評判を聞いてみましょう。
ネガティブなことは言わない筈です。
ポジティブなことを、本当に心からそう思って語ってくれていそうですか?見極めが肝心です。

選べないならプランナーさんが推薦するという流れになると思いますが、上記と同様です。
真にいい司会者だと思って薦めてくれていそうですか?
ただ単にスケジュールが空いているからではないですか?
お二人の日程はどれくらい先なのでしょうか?
当日までさほど余裕がない場合は、空いている司会者を薦めているだけかも知れません。
お日柄も加味して考えましょう。
大安や友引・土曜日・三連休の初日・春や秋のベストシーズン、こういった条件ほど早くに人気の司会者はスケジュールが塞がってしまうものです。

いずれのケースでも、そもそもプランナーさんは信頼できる人ですか?
本当にとっておきのお薦め司会者ならば、それこそが第1章でお伝えした全司会者の中の僅か5%に当たる〝スペシャルな〟司会者かも知れません。

会場が開催するブライダルフェアに行かれることもあるでしょう。
司会者のブースで、実際に接客に当たってくれた司会者で決めてしまうカップルも、少なからずいらっしゃいます。
きっと話していて好感を持たれたんでしょうね、“ご縁”があったのです。
乱暴な決め方のようですが、そもそも結婚されるお二人もご縁あればこそご一緒になられるんですよね?
こういうのも、結婚式というご縁を結ぶイベントに相応しい決め方かも知れません。

◯フリーのプロ司会者から選ぶなら、インターネットなどから得られる情報を最大限に利用しましょう。
PR映像(ご挨拶動画)などではない実際の司会の様子を収録したリアルな映像や、その司会者が担当した先輩カップルのレビューなどは、他に類を見ない貴重な参考資料です。
但し、その司会者のインターネット情報は信用の置けるものですか?
会場を介さず直接のやり取りとなりますから、条件面なども含めてしっかり吟味してください。
また、会場によっては持ち込み不可であったり持ち込み料が必要だったりします。
事前に確認し、出来れば正式契約前に持ち込む旨伝えましょう。
交渉の材料となるかも知れません。

◯友人に司会をお願いするなら、まるっきり任せっ放しにするのではなく、お二人と司会者の3人で一緒に創り上げていくような意識が必要です。
少々のミスは笑い飛ばしていけるような鷹揚さも必要だと思いますし、当日のポジティブな場の空気(司会を盛り上げてくれるような)が想定できるかどうかも、お願いする為の大切な条件だと思います。
上手くハマればプロ司会者が太刀打ちできないような宝物を、お二人は手にする筈です。

いかがでしたか?
結婚式の、結婚披露宴の司会者の適切な選び方について、知るところ、思うところを余すことなく開示させていただいた積りです。
冒頭に記しました通り、本記事が“オンリーワン”の司会者を、あるいはそこまでいかなくとも後悔はしない“それなり”の司会者を見つける手引となりましたなら幸甚の至りです。

我々は新型コロナウイルス感染症の猛威を、既に経験した世界に住んでいます。
このコロナ禍にあって、予定の結婚式を延期・キャンセルされたカップルが全国に沢山いらっしゃいます。
会場を提供する事業者も司会者も全てのウェディングに関わる者が「ウィズコロナ社会」を見据えて事業を業務を展開し、お二人やゲストの方々に安心・安全を提供していく為に今、様々に知恵を絞っています。

司会者は「喋る」のが仕事です。
所謂「3密」回避を、ソーシャルディスタンスを意識していかなければなりませんし、スキルの上では、高齢だったり遠方だったりで列席を見合わせた“ゲスト”を対象としたリモート司会など、まさしくフレキシブルに対応していかなければなりませんよね。
そういった気遣いをしてくれるのかどうかも、お二人の選択の判断基準に加えていかれた方がいいのかも知れません。

納得のいく司会者を見つけられますように。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。