もう20年来付き合いのある司会事務所から電話がありました。
なんでも、私が数年前に担当させていただいた披露宴の新婦から事務所宛に電話があり、私の連絡先を聞いてこられたとのことでした。
事務所からの電話は連絡先を伝えていいかの確認だった訳です。
もちろん了承し、私はご用件を予想します。
「おっ… きっとお友達かご親族関係の司会の依頼だな。ありがたい!」
だいたいこう予想するのが妥当だと思うんですね、経験的に。
結婚披露宴の場合「リピーター」というのはまずいらっしゃらないんですけど、担当させていただいた新郎新婦から推薦していただいたり、逆に出席していたゲストに気に入っていただいて依頼を受けたり…
これは司会者冥利に尽きる繋がりなんです。
電話で聞いた情報を元に過去の記録を引っ張り出し、お二人のお名前や披露宴の年月日、会場名、はたまた進行内容などを調べます。
パソコンにデータが残っていれば色々思い出しますからね。
昨今の防衛省や文科省ではよくそれが消えたりまた現れたりするようですが。

そうこうするうち、その日のうちにご連絡をいただきました。
かつての新婦からのご連絡ですから、結婚されて変わったであろう新郎の姓を名乗るものと勝手に想像していましたら(そういった固有名詞などを事前に確認しておいたんです)さにあらず、旧姓(?)だったことに少し違和感を感じていました。
一通りのご挨拶の後、本題に入ります。
「その節はお世話になったんですけど… 別れまして…」
「!…(そんな連絡をなぜ?)」
「でも、司会はとても良かったので」
「あぁ、はい(それはどうも、ありがとうございます。で?…)」
「で、今度再婚することになりまして」
「あ、はい(はやッ!)…」
「彼も『いいよ!』って言ってくれるので」
「はい(彼って、再婚されるお相手、ですよね?)…」
「今度も司会をお願いできないかなーと思いまして、ご連絡しました」
いや、まぁービックリしました!
こういうケース、普通、あまり頼みませんよね?縁起が悪そうで、司会者。
会場だってきっと全然別のところで行う筈です。
でも、次第になんかとてもうれしい気分になっちゃったのは偽らざる私の気持ちでした。
そんなケースでもご依頼いただける___電話をいただいたこの女性は「純然たる」リピーターでいらっしゃったのです。

急ぎスケジュールを確認しましたらあいにく先約があり、結局担当させていただくことはできなかったのですが、稀有なケースでとても残念に感じたことを覚えています。
お受けできないことをお詫びすると共にお幸せをお祈りしていることをお伝えし、併せてこう言い添えました。
「くれぐれもご主人によろしくお伝えください」。
男たるもの、相手が望むなら過去の「些細なこと」にはこだわらず、文字通り鷹が大空を舞うが如く“鷹揚に”構えていたいものです。
お会いすることはできなかったものの、電話の女性の再婚相手は、男の私から見ても絶対に「イイ男」だったに違いないと確信しています。

<2017年7月記事 再録>